やるべきことがある。時間もある。
それでも手が動かない。気が重い。近づけない。気づけば別のことをしている。
この現象は「やる気がない」で片づけられがちである。だがそれは説明ではなく、ただのラベルである。
本質は単純である。
そのタスクが、脳内で「公開テスト化」しているのである。
タスクが“存在しない(0)”状態が起きる理由である
「優先度が低い」では足りない。
実際は、タスクが実行候補リストから消えている状態である。つまり「0」である。
0になる典型要因は次の通りである。
- 緊急性がない(やらなくても今日困らない)
- 開始点が不明(どこから手を付ければよいか曖昧)
- 成功条件が重い(ちゃんと・完璧に・成果を、が前提)
- 失敗の痛みが大きい(自己否定や評価不安と結びつく)
ここで重要なのは、「自分が弱いから」ではない点である。
設計が、実行されない形になっているのである。
公開テスト化とは何か、である
公開テスト化とは、タスクが次の要素を帯びた状態である。
- 逃げ場がない感じ(やると決めた瞬間に拘束される)
- 評価される感じ(良し悪しが出る、点数が付く気がする)
- 失敗が露呈する感じ(できなさが可視化される)
- 即時に痛い感じ(すぐに気まずい、焦る、落ち込む)
この状態では、行動を止めるのが自然である。
人間は「努力」を避けるのではない。**危険(と感じるもの)**を避けるのである。
よって、問題の主語は「意志」ではない。
タスクの出し方である。
解決は“根性”ではなく、公開テストを解除することである
公開テスト化を解除する操作は大きく三つである。
どれも「頑張る」ではなく「設計を変える」である。
1) 自由を減らす(レール化である)
自由は可能性を増やすが、同時に失敗可能性も増やす。
恐怖がある時の自由は、毒である。
よって最初はこうするのである。
- 選択肢を削る(道具・場所・手順を固定する)
- 手順を短くする(考える工程を排除する)
- 例外をなくす(毎回同じ動きにする)
自由を削るのは退化ではない。起動のための工学である。
2) 成功条件を下げる(採点の停止である)
公開テストの燃料は「採点」である。
「うまくできたか」「進んだか」「役に立ったか」で判定すると、脳は逃げるのである。
よって成功条件はこうする。
- 成功=起動した
- 成功=最初の一手を実行した
- 成功=途中で止めても、次に戻れる形を残した
ここで誤解が生まれる。「それは甘えではないか」と。
違う。練習とは本来、失敗してよい設計である。
失敗できない練習は、練習ではないのである。
3) 起動を速くする(入口の摩擦除去である)
継続を決めるのは意志ではない。起動速度である。
起動が遅いものは、負けるのである。
起動速度を上げる要点はこれだけである。
- 開始点を一つにする(「何をするか」を固定する)
- 準備をゼロに近づける(探す・整える・迷うを潰す)
- “開始までの手数”を減らす(3手以内が目安である)
実装:公開テストを解除する「3点固定ルーティン」である
抽象タスク全般に効く、最小ルーティンを置く。
3点固定
- 場所固定:ここでやる
- 道具固定:これしか使わない
- 開始固定:最初の10秒はこれだけやる
開始手順(合計30秒〜2分である)
- 道具を開く(ここが起動である)
- 最小の一手を実行する(例:1つ見る/1つ選ぶ/1行書く)
- 痕跡を残して終了してよい(例:一言メモ、チェック一つ)
そして判定は一つだけである。
成功=起動した。内容は採点しない。採点すると試験に戻るのである。
新視点:やる気は“前提”ではなく“副産物”である
やる気が出たらやる、は一生やらない。
先に起動できる形にする。するとやる気は後から付いてくる。これが現実である。
タスクを回している人は強いのではない。
弱くても起動できる設計にしているだけである。
まとめである
タスクができないのは怠けではない。公開テスト化しているだけである。
解除するには次をやる。
- 自由を減らす(レール化)
- 成功条件を下げる(採点停止)
- 起動を速くする(摩擦除去)
- 3点固定でルーティン化する(場所・道具・開始)
意志を鍛える前に、設計を直すべきである。
設計が変われば、行動は自然に起きるのである。

